浄土真宗本願寺派 松光山 西林寺

【スクールナーランダ with JT】@築地本願寺②

【スクールナーランダ with JT 】オンライン配信スタート

2020年10月25日(日)PM1:00、LIVE配信スタート(今もご覧いただけます)

今回のテーマは、『 冷たいお金の集中から温かいお金の廻りへ 』。

かつて、浄土真宗門徒が多かった近江商人は、
三方よし (売り手よし、買い手よし、世間よし) 』という
仏教の教えに由来する商売の理念を大切にしてきました。

今またこうした姿勢が注目を集めており、
このような浄土真宗の教えに基づく考え方を通して、
温かいお金が巡る社会について考えるーというのが今回のテーマです。

御講師は、進化経済学者 西部忠さん、
日本たばこ産業株式会社 副社長 廣渡 清栄さん、
そして、浄土真宗本願寺派僧侶 成田 智信さん。

司会進行 START。5時間半の長丁場です。

授業① 進化経済学者 西部 忠さん

西部忠氏:専修大学経済学部教授、北海道大学名誉教授、進化経済学会 会長。
1990年代から地域通貨の研究・ 実践に取り組まれ、2018年には専修大学
デジタルコミュニティ通貨 コンソーシアムラボラトリー、通称『グッドマネーラボ』を設立。
昨年9月には、地域通貨国際会議 RAMICS を岐阜県高山市でアジアで初めて主催されました。

先生からは、貨幣の過去・現在・未来について、
「お金」の歴史的な過去を振り返りながら、現在について話しつつ、
未来を展望する、という形でお話しをいただきました。

授業の合間に『法衣の解説』

続いての授業の前に、
浄土真宗本願寺派 僧侶による『法衣(ほうえ)の解説』。

お坊さんが着用する「袈裟」など、
きらびやかに見える
その装束にはどんな意味が込められているのでしょう。

実際にその装束を見ながら教えていただきました。

授業② 日本たばこ産業株式会社 副社長 廣渡 清栄さん

おふたり目は、【日本たばこ産業株式会社】副社長の廣渡 清栄さんです。

廣渡さんは、1989年に【日本たばこ産業株式会社】に入社され、営業を経験後、専売公社から引き継がれた塩専売事業の幕引きに携わり、旧・大蔵省への出向を経て法務部に勤務されます。その後、法務部長、
執行役員 法務責任者、たばこ事業本部 事業企画 室長、人事担当等を歴任し、JTの持続的成長の基盤整備、組織力強化や人財マネジメントにおいてリーダ ーシップを発揮されています。

JTさんは、正式には『日本たばこ産業株式会社』。
その昔、タバコは専売制。
かつては国営企業だった日本専売公社が民営化されたのが今のJTさん。
国の一機関から変わった、世界の大きなたばこ会社のひとつ。

会社とは何のために存在するのか?

『 会社は社会の公器である 』

パナソニック創始者 松下幸之助の言葉を引用され、
「会社とは何のために存在するのか?」をお話しされました。

『会社はただ商売をして、お金を儲けて、身内で分配する、、
そういうことだけじゃなくて、会社は資本を循環させるものであって、
その循環を通じてより良い人生、より良い社会実現のために独自の価値を創造していく』と。

会社は、「株主」「お客様」「労働力」「社会」へそれぞれに還元し循環させていく。
「株主」へは、ビジネスを通じて得た利益を大きくして配当や株価に還元を。
「お客様」へは、モノやサービスを提供し、かわりに代金を頂戴する。
「労働力」は、ビジネスに必要な労働力、人の知恵は従業員から得て、
それをお給料ややり甲斐といった形で還元する。

そんな中で経営者は『より会社を大きくしたい、成長させたい』と思うのはなぜか?

それは利己的なお金儲けではなく、会社はより多くの付加価値を生み出して、
より多くのものを預かり、そこにまた多くの付加価値を付けて還元していくー

会社が得たお金だけではなくて、モノや情報、人の知恵など、
会社がこれに付加価値を付け、より大きくしてはまた循環させていく。
これを高い次元で、バランス良く繰り返して、ポンプのように循環させるー
このシステム自体が「会社」である、と、

大変興味深い話をして下さいました。

モノの豊かさ、心の豊かさ

『今の世の中はテクノロジーの親展に伴って、
社会全体が合理的になって進化している。

その一方で、人の個性の多様性、曖昧さ、
”それもまた人間らしいじゃないか”と受け入れる社会がある。

・・・そういった「人間らしさ」の対極に
今の「テクノロジー社会」があるのではないか。

「人間らしさ」=「心の豊かさ」、
それに対して、
「テクノロジー社会」=「息苦しさ」

この「息苦しさ」は、社会が便利に進化すればするほど、
益々高まっていくのではないか。

テクノロジ—の進化によって忘れ去られつつある
「人の心の豊かさ」に寄り添って生きていくー

社会の中で色んな個性があってもいいではないか。

我々JTは、人間らしさ、心の豊かさの領域を
世の中に問い続けていく事によって、
”あがき続ける”、そんな存在でありたい。

「心の豊かさ」を独自の付加価値として、人間らしさの領域で、
『あたたかいお金の循環をつくる』そんな存在でありたいー

…まさに、JTさんのCMに出てくる言葉、『人の時を想う JT』
その理念の背景を聞かせていただいたようなお話しでした。

授業③ 浄土真宗本願寺派僧侶 成田 智信さん

続いて3人目の先生は、
浄土真宗本願寺派 僧侶の成田 智信さん。

成田先生は、横浜市の浄土真宗本願寺派 善了寺のご住職。
人が集える場所をつくりたいという思いから、善了寺に「聞思堂 cafe」やデイサービス『還る家ともに』を併設。
キャンドルナイトやワークショップ、トークイベントなど様々な催しを開催されています。
また、まちづくりに携わるなかで、環境・お金・命の問題を見つめながら、
地域住民とのつながりを大切にして幅広く活動されていますー

成田先生は、『 お金 × 仏教 〜出遇うことの大切さ 』と題し、
かつて、浄土真宗門徒が多かった近江商人の仏教の教えに由来する経営哲学、
三方よし (売り手よし、買い手よし、世間よし) 』についてもお話し下さいました。

『 近江商人 』とはー

近江商人は、江戸時代から明治にかけて活躍した商人で、
近江国(現在の滋賀県)に本宅を置き、他国へ行商して歩いた商人の総称です。
大坂商人、伊勢商人と並ぶ日本三大商人のひとつといわれています。

彼らの経営哲学のひとつとして、仏教の教えに由来する『三方よし』を、
商売に対する姿勢・理念として大切にしてきました。

自らの利益のみを求めることなく、多くの人に喜ばれる品を提供し続け、
さらに利益が貯まると無償で橋や学校を建てたり、
社会に対して積極的に貢献したのです。

つまり『三方よし』とは、
『商売において売り手と買い手が満足するのは当然で、
社会に貢献できてこそ良い商売といえる』という、
現代の経営哲学に通じる考え方を持っていたのです。

仏教理念を考える

では、そんな近江商人が大切にしてきた「仏教理念」とはどんなものだったのでしょう?
成田先生は、仏教の基本的な考え方『四法印』についてお話しされました。

ちなみに四法印の「印」とは旗印を意味し、以下の条件が備わっていれば、
「その思想は仏教の教えに違いない」と断定するための証拠としたものです。
その『四法印』とは、

①『 諸行無常 』・・・全ての現象世界には常なるものがひとつもない。
すべての物事は常に変わっていく。何ものも永遠不変はありえない。

②『 諸法無我 』・・・全ての現象世界には確固たる自己はひとつもない。
すべての物事は関係性の中で成り立っている(縁起)。
急に湧いて出てきたものなどない。全てのものは関係性の中にある。

③『 一切皆苦 』・・・全てのものは皆苦しみである。思い通りにならない。
全て予定通りにいかない。まさに今回のコロナがそう。

④『 涅槃寂静 』・・・上記の諸行無常、諸法無我の真理に目覚めていくことこそ、
「涅槃寂静」の境地を体得することであり、それが仏道の目指すさとりの境地に他ならない。
涅槃 (ニルヴァーナ)とは全ての煩悩の火が吹き消された状態。何ものにも心を煩わされない状態の事。

近江商人の理念は単なるスローガンではなく、仏さまの教えそのものでした。
そこには具体的な人と人との営みがあった。

『売り手良し、買い手良し、世間良し』は、別の捉え方として、
自分良し、相手良し、世間よし』という形もある。

『自分良し、相手良し、世間よし』といは、
利益を上げることだけが目標になっていません。
利益は事業継続のための必要条件です。「目標」ではありません。

だから「理念」がとっても大事。
仏教を生きる事は「理念そのものを生きる」こと。
理念が仕事になる。…そんな現象が近江商人でした。

と、成田先生のお言葉でした。

最後は、講師全員による鼎談(ていだん)

最後は、スクールナーランダ・コーディネーターの林口砂里さんと
今回ご登壇いただいた講師の先生方全員によるトークディスカッションです。

今回先生方の話を伺う中で、共通のキーワードが出てきました。
それが「信頼」や「関係性」、「つながり」。

コーディネーターの林口さん:
『成田先生の仏教を生きるという話の中で「三方よし」のお話が出てきました。
「自己と他者」、「自己と社会」が平行の関係性の中で生きていると認識しているが、
ここにプラス、「仏さまと自分」、「仏さまと社会」という
もう一つ垂直的な視点を持つことが大事であると感じました』

成田先生も、『この視点を持てるか?とても大事なポイント。
ここを持てる、持てないかはとても大事』と、とても印象深いお言葉でした。

また進化経済学者の西部先生は、『互酬(ごしゅう)』という大変興味深い言葉を紹介されました。

『互酬』とは

『ペイバック( Pei Back )』とは、贈与と返礼。
それに対して、『ペイフォワード( Pei Forward )』は、贈与の回し合い、「互酬」。

良い事をしてくれた相手に、良い事をお返しするのでなく、
良い事をしてくれたのだから、今度は私が他の人へ良い事をしようということ。

つまり、『恩返し』ではなく『恩送り』。

親切心や善意をその相手とは別の人に行い、恩を送ることで多くの人へ広がっていく。
『あたたかいお金の廻り方』も、この考え方が
社会で持続可能にしていくあたたかいお金の廻り方ではないか、と仰いました。

物事を平面的にみるのでなく垂直的な視点でみること、
そして『恩送り』という視点も、非常に仏教的な視点であると、とても勉強になりました。

ありがとうございました

今回の『スクールナーランダ with JT』は、初のオンラインということもあり、
幅広い年齢層の方にご覧頂く初めてのケースとなりました。

LIVEチャットで『今どこからご覧頂いていますか?』と呼びかけると、
東京、大阪、京都、佐賀、北海道、東京のカフェ、担々麺屋さんで並びながら、、
はたまた、アメリカ・ボストン、ベルギーからもご覧にてだいていると、
ダイレクトに反応が返ってきて、オンラインで繋がれていることの感動だったり、
新しい気づきなどが沢山ありました。

今回のスクールナーランダは、コチラ↓にて現在も配信されています。
スクール・ナーランダ公式YouTubeチャンネル
よかったらどうぞご覧下さい。

長文で失礼しました。
ご一読頂いた皆さま、ありがとうございました

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