日記帳

日記帳

第二期 西林寺参道工事 ③ – 敷石を求めて京都丹波へ –

前回までのあらすじ

ご門徒さまより『何か形に残るご寄付をさせていただきたい』とのお申し出をいただき、日頃お墓参りに来ていただける皆さんにも喜んでいただける形として『参道の石畳化』をご提案したところ、快諾していただいた事から始まった今回のプロジェクト。2月に行われた『第一期 境内石畳工事』の模様はコチラ

境内の石畳を施工して頂いた佐藤石材さんより、今や手に入らない旧路面電車の「軌道用敷石」をなんと50枚も譲っていただいたため、山門から伸びる玄関・大玄関までの道は「軌道用敷石」を敷くことに。

いざ施工ー
山門から玄関までは問題なく完了するも、大玄関まで伸びる道の途中、50枚の敷石では石が足りないことが判明。
長い年月によって独特な表情と丸みをおびた軌道石に、現行の外国産の石材を併用するとかえってチグハグ感がでてしまう、、

…途方に暮れていた矢先、南区檜原の浄福寺様のご厚意で、所有されていた軌道用敷石10枚を譲ってくださることに。

…浄福寺さま、本当にありがとうございました。
これで念願の石畳工事が遂に完成、、と思われたが矢先・・・

『石ない問題』再び・・・

あともう一歩のところで、再び石が尽きてしまった。

本来であれば、残り3枚を敷いて完成という形だったのですが、急遽前住職のリクエストで、当初予定にしていなかった玄関前のコンクリートまで外してしまったため、、再び『石ない問題』が発生。

「軌道用敷石」はそもそもがヴィンテージ石。九州ではもう手に入らないという・・・

一筋の光明。

そんな中、「石」に大変お詳しい浄福寺のご住職より、京都に旧市電の敷石を数百枚所有している石屋さんがあり(!)、ご紹介をして下さるとのこと。

・・・ここまで来たら、最後までやり遂げたい、、

ということで、、

急遽、自腹で日帰り京都・丹波へ。(笑)
お財布は痛いが鼻息は荒い。京都弾丸買い付け旅です。

京都 丹波

2022年5月22日(日)、朝6時の鐘を撞いて、本堂でお参りした後慌ただしく新幹線に乗り込んだ。
京都へ11時前に着。京都駅には今回お世話になるRガーデンの社長さんが、わざわざ車でお迎えに来てくださった。

車で走ること45分。京都・京丹波町のRガーデンさんへ。

想像を超える広さ、、なんと5万坪の広大な敷地に京都近郊の銘石が、信じられないくらいの量で置かれていた。

オーナーさんは京都で有名な庭師さん。
ご自身で「使いたい」と思った石を買い集めた事に始まり、リユースのリユース。京都の庭や旧家、財閥の別荘等を取り壊す際に出てくる「古材」の買い戻しに力を入れているとのこと。

これによって近年採石が禁止されている幻の銘石「鞍馬石」や、昭和初期に石切場が閉山し、今は採石さていない「白川石」、現在ほとんど採石できず極度に手に入れることが難しい「貴船石」など、京都から持ち出し不可能と思われていた石がものすごい数で置かれていた。

京の銘石 加茂七石の一つ『紅加茂石』。超レア品種の石がこんなにもたくさん。

『紅加茂石』は京都加茂川の上流でかつて採石されていた銘石。
通称『肉石』とも言われ、水を掛けるとまるでA5ランクの高級霜降り牛のような赤みと筋模様が浮かび上がる。
派手好きを好む名古屋の方が特に好んでこの庭石として使用されてきたそう。
現在採掘が禁止されているためリユース品以外は殆ど手に入らない。

「鞍馬石」もこんなにたくさん。近年採掘禁止のレア中のレア銘石。
見る人が見れば、その数とスケールにあっと驚くそうだ。

ここはまさに銘石のワンダーランド。

しかも、それは宝探しのように良い物悪い物が無造作に置かれているのでなく、銘石の品種によってエリア分けされ、とても見やすく分かりやすくレイアウト。

そんなすごい石を拝見しつつ、、私のお目当ての旧市電・軌道石エリアへ。

なんと、「京都」の市電・軌道様敷石だけで800枚も所有されているとのこと。
九州ではお目にかかることもない京の旧市電軌道石、そして京町屋の敷石がこんなにもたくさん。

他にも、変わったところでは鎌倉時代の石燈籠や、

1864年、蛤御門の変で焼失した東本願寺の屋根瓦など(!)、
古材超ビギナーな私でも、そのスケール感と超一級品の一大見本市にただただ圧倒された。

…まさにホンモノを見て「眼」を養う、とはこのことか。

オーナーさんのもとには、あの現代美術家 杉●博司さんも美術館で使用する素材をここで探されるそう。
日本中を血眼になって探し回る石のバイヤーでさえこのスケール感と品揃えに驚くという。

そんな庭師でオーナーさんから、参道をつくるにあたって様々なアドバイスをいただいた。

ひとつひとつ石を置くにしても物語がある。単に石を敷くにもわずかな心遣いがある。参道として考えず、物語として考えることが大切ですよ。

…とても参考になる言葉をいただきました。

そんなオーナーさんに、西林寺の小さな区画ですが(汗)、数ある石の中から予算の範囲内で石を選んでいただいた。

『せっかくなら、全部軌道石で形づくるよりも、玄関前に「役石」を一枚おかれたらどうですか?』と。

役石とは、日本庭園における飛び石や石組みの要所に特別な目的を持たせて置いた石のこと。「目付」や「主石」とも言い、軒内や門の前後、待合の内外などに置かれる石のこと。

そんな役石の中で最初に目に飛び込んできたのが、1,600×660の一枚石。

『この石は、かつて西陣織・呉服屋の冠木門の下に敷かれていた石で、よく見るとうっすら手彫りによる二段加工が施されている。当時、呉服屋に通ったお客の下駄で何万回と踏み込まれた石。機械加工ではなく当時の手彫りでしかも面取り装飾、二段加工まで施されている。この石には通常の何倍もの手間暇がかかっており、この石を作らせた施主は相当なお家だったに違いない。』

『…そんな物語ある役石が、今度はお寺の本玄関前におさまるというのは、物語としてもとてもええんのとちゃいます?』と永田さん。

 

・・・オーナーさんの石にまつわる物語と石に対するたっぷりの愛情にクラクラ。
金額も市場価格よりずいぶんと押さた金額だったので、この石を中心にお寺の玄関前区画の構成をお願いしました。

オーナーさんおすすめの役石を中心に据えて、周りを京の旧市電敷石、京町家の敷石で構成。

『これでよろしくお願い致します!!!!』と遂に決定。

今回弾丸での京都・丹波石買付旅でしたが、久しぶりに目からウロコの連続。
今まで何も思っていなかった石そのものへの考え方、価値観、庭づくりに対する考え方とその意図を、、一級品の素材を見ながら学ぶ大変良い機会となりました。

Rガーデンさん、本当に素晴らしいご縁をありがとうございました。

数日後、西林寺

後日、Rガーデンさんよりすぐに大玄関前に敷く石一式が送られて来ました。

さっそく、玄関前に石を組んで、、

遂に完成しました!

境内参道正面は犬島石。

横から玄関・大玄関へとのびる小道は熊本・長崎の旧市電 軌道石。

そして大玄関前の区画は、西陣織呉服屋で使われていた役石を中心に京都の旧市電軌道石、京町屋の敷石で構成されました。

境内参道石畳化計画はこれにて完成です。
今回西林寺へ石畳を寄贈してくださったM本さま、本当にありがとうございました。