2025年7月27日(日)付、讀賣新聞朝刊の「フクオカビュー」にて、これまでの活動を取り上げていただきました。
市場に釈迦像 多文化共生
※ 2025(令和7)年7月27日(日)讀賣新聞朝刊より抜粋
福岡市博多区のJR吉塚駅ちかくにある吉塚市場。空き店舗が目立っていた市場は、2020年に在住外国人との共生と商店街の活性化を掲げ、「吉塚市場リトルアジアマーケット」として生まれ変わった。市場には、ひときわ輝く金色の釈迦像が鎮座し、福岡に住む外国人仏教徒の心のよりどころになっている。発起人のひとりである同区の西林寺住職の安武義修さん(49)に、多文化共生への取り組みを聞いた。(今村知寛)
ーー長年、カンボジアの支援を続けている。
「02年に旅行で立ち寄り、人々の輝く笑顔に魅了され、寺に寄せられたさい銭を現地の学校に寄付するようになった。08年には寺の本堂で、カンボジア支援に賛同するアーティストを迎えた演奏会『キャンドルナイトLIVE』を始めた。毎年約230人の観客が集まる寺の一大行事で、収益の一部を現地に直接届けている。これまで坂本美雨さんや藤原ヒロシさんらが出演した。」
「12年からは友人が暮らすサムボー村で井戸の建設支援も始めた。子どもたちが水くみの労働から解放され、乾期でも農作物を育てられるようになるなど、村の様子が激変した。最近は周囲の村にも活動を広げている」
ーー近くの吉塚市場を在住外国人が集うにぎわい空間へと変容させた。
「19年に住職を継職した時、地域に恩返ししようと思った。周辺には日本語学校が多く、アジア出身の若者をよく見かけるようになっていた。育ててもらった吉塚市場はシャッター街と化していた。アジアの市場に寄せて店を誘致し、活性化できないかと考えた。門徒でもある市場の組合長の尽力もあり、20年に『リトルアジアマーケット』として再出発した」
ーー市場にはミャンマーから迎えた釈迦像がある。
「タイ出身の留学生から日本では手を合わせる場所がないと聞いた。組合長に相談すると『釈迦像があれば、彼らの心に寄り添える。市場に像を迎えれば、ここがその象徴となる』と協力してくれ、新たに御堂も準備した。今では、ベトナムやミャンマー出身者が定期的に集まり、譲り合いながらお祈りをし、母国語で思いを吐き出せる場になっている。若者が熱心に手を合わせる姿を見て、商店街利用者の外国人へのイメージも変わり、声かけなどの交流もうまれるようになった」
ーー7月の参院選では外国人の受け入れ政策が争点に浮上した
「外国人の受け入れに対して少なからず規制強化の主張があったのは残念だ。吉塚地区でも、小売店や福祉などの現場で外国人労働者が活躍している。(日本側の)政策の変化によって、翻弄されるのは、日本で暮らす外国人たちだ。借金を背負って来日し、過酷な状況下で働いている人も多く、政治家には地域に暮らす外国人と交流し、彼らの実情を知ってほしい」
ーー今後はどんな活動をしていくのか。
「過去にゴミ出しなどを巡ってトラブルもあったが、こうしたことがないように、日本語学校や九州大の先生、地元住民らとともに共生を考えるグループを作った。在住外国人の方から寺のスペースを貸してほしいとの依頼も増えており、4月にはミャンマー人グループと地震について考えるイベントを本堂で開き、今月は外国にルーツを持つ子どもたちを支援する団体と夏祭りも行った。これからもできる範囲で共生の仕掛けや交流の場をつくりたい」
やすたけよしのぶ
福岡市出身。龍谷大大学中に得度した。2000年に実家の浄土真宗本願寺派・西林寺に戻り、副住職に。その後、バックパッカーとしてスロバキアやモロッコなど23カ国を訪問。カンボジア支援をきっかけに同国の僧侶と仏教交流を行い、現地の寺院で雅楽を披露したことも。経験を地域に還元しようと、住職に就任してからは、在住外国人を巻き込んだまちづくりに取り組む。